はじめに
「給与が低いから転職したい」「派遣じゃキャリアが不安」——そんな本音、面接でそのまま言えますか?
言えないですよね。だから私たちは「建前の転職理由」を用意する。でも、その建前が面接官に一枚めくられたとき、何も言えなくなってしまう。
これは私が33歳・技術派遣エンジニアとして転職活動をしていたときに、実際に経験した面接失敗談です。転職理由を深掘りされ、答えに詰まり、場の空気がみるみる冷えていくあの感覚——思い出すだけで胃が痛くなります。
でも、この失敗があったからこそ気づけたことがある。同じ轍を踏んでほしくないので、包み隠さず書きます。
面接では必ず「転職理由」を深掘りされる
転職活動をしている人なら誰もが一度は調べる「面接でよく聞かれる質問」。その筆頭が転職理由です。
「なぜ今の会社を辞めようと思ったんですか?」
この質問、一見シンプルに見えて実はかなり厄介です。なぜなら面接官は、あなたの最初の答えで満足しないから。「なぜですか?」「具体的には?」「それってつまり〇〇ということですか?」と、答えの裏側を掘りにくる。
特に中途採用の面接では、応募者の本音を見極めようとするベテラン面接官が多い。表面的な答えを返すと、すぐに「薄い」と見抜かれます。
準備してきた答えが通用しなかったとき、人は言葉に詰まる。私がまさにそうでした。
私の転職歴とキャリアの流れ
転職活動当時、私は33歳。IT系のネットワークエンジニアとして、大手自動車部品メーカーに常駐していました。
仕事の内容は、社内の無線・有線LANの保守運用です。「ネットがつながらない」「通信が遅い」といった問い合わせ対応から、ネットワーク機器のアラート検知・原因調査・復旧作業まで担当していました。普段は保守をスムーズに進めるための資料整理や構成整理なども行っていました。
技術派遣という働き方について、最初から強い不満があったわけではありませんでした。ただ、働いていく中で少しずつ違和感が積み重なっていったのは事実です。
自由度が思ったより低い。雑務が社員より多い。出張の頻度は社員と変わらないのに、待遇の線引きはあいまい。そして何より、給料が低い。将来のキャリアへの不安が、じわじわと大きくなっていきました。
「このままでいいのか」——その気持ちが臨界点を超えたとき、転職活動をはじめました。
面接で実際に聞かれた質問
問題の面接は、地元にある食品メーカーでのことでした。社員数はおよそ100〜200人規模の会社です。
私が用意していた転職理由はこうです。
「様々な業務に携わり、自身の経験を積める環境でした。ただ、派遣という立場上、どうしても派遣先への依存が生まれてしまい、キャリアの方向性に不安を感じるようになりました。また、生活面での安定も考えると、正社員として腰を据えて働きたいという思いが強くなりました」
自分なりに整理して、それなりにまとめたつもりでした。
面接は序盤から淡々とした雰囲気で進みました。圧迫というほどではないけれど、温かくもない。一問一問答えるたびに、なんとなく場の空気が重くなっていく感じがありました。
そして、例の質問が来ました。
深掘りされて詰んだ瞬間
面接官にこう言われました。
「それって、収入が上がればうちじゃなくてもいいってことなんじゃないの?」
私は何とか言葉を絞り出しました。
「いえ、地元で働く中で、この食品であれば御社だという思いでいます」
……我ながら苦しい答えです。しどろもどろだったと思います。その言葉が口から出た瞬間、「あ、詰んだ」と思いました。
なぜその質問が刺さったのか。答えは単純で、面接官の言っていることが正しかったからです。
正直に言えば、その会社に強い志望動機があったわけではない。「地元で、条件が合えばどこでも」という気持ちが根底にあった。それを見透かされた一言でした。
薄い建前の上に積み上げた答えは、少し押されただけで崩れる。そのことを、この瞬間に身をもって知りました。
面接後に気づいた本当の失敗
面接会場を出た瞬間、頭に浮かんだのは「ここは落ちた」という確信でした。結果を待つまでもなく、わかりました。
帰り道、何が悪かったのかを考えました。
最初は「相性が悪かった」と思いました。確かに序盤から面接官とはかみ合っていなかった。でも冷静に振り返ると、それだけじゃなかった。
本当の失敗は、転職理由に一本の軸がなかったことです。
「キャリア不安」「収入面」「正社員になりたい」——それぞれは本当のことです。でも、それらがバラバラに並んでいた。どれが一番の理由なのか、なぜこの会社なのか、転職することで自分はどうなりたいのか。そこまでの「筋」が通っていなかった。
だから「収入が上がればどこでもいいんじゃないの?」という一言に、反論できなかった。
面接官の目には「とりあえず転職したいだけの人」に映っていたと思います。そう考えると、冷えていく場の空気も当然でした。
もうひとつ気づいたのは、「自分は話せる」と思い込んでいたことです。人と話すのはそれほど苦手じゃない。ある程度、その場で考えて答えられる自信があった。その油断が、準備不足につながっていました。
同じ失敗をしないために
この失敗のあと、転職理由の組み立て方を根本から見直しました。
まず意識したのは、「今回の転職が最後だと思わせる一本の筋を通す」ことです。
「なぜ今の状況に至ったのか」「なぜ転職するのか」「なぜこの会社なのか」——この3つが一本の線でつながるように、ストーリーとして整理しました。どこを深掘りされても、同じ軸に戻ってこられるように。
次に、本音と建前のバランスを7:3にすることを決めました。
全部本音を言う必要はない。でも、建前ばかりで固めると必ずどこかで崩れる。ある程度本音を入れておくほうが、答えに一貫性が出るし、入社後の自分も楽になります。「マナーとしての建前3割、伝わる本音7割」——これが今の私の基準です。
そして何より大事なのが、想定質問への答えを事前に固めておくことです。
転職面接で必ず聞かれるのは、「今までの経緯」と「転職理由」のふたつです。この2問だけは、どんな深掘りをされても答えられるように、繰り返し言語化しておくべきです。
「自分は話せる」「なんとかなる」と思っているときほど、足をすくわれます。慣れや自信があるときこそ、準備を怠らないこと。これが、あの失敗から得た一番の教訓です。
まとめ
転職理由は、面接で最も深掘りされる質問のひとつです。
表面的な答えを用意しているだけでは、「それって〇〇ってことじゃないの?」という一言で崩れてしまう。私はそれを身をもって経験しました。
大切なのは、嘘をつかないことよりも一本の筋を通すこと。本音を軸にしながら、なぜ今転職するのか、なぜこの会社なのかを自分の言葉で語れるようにしておく。それだけで、面接の場での安定感はまったく変わります。
転職活動中のあなたへ。準備できているところは、しっかり固めておいてください。「話せる」という自信が、一番の油断になることがあります。
この記事が、同じ失敗を繰り返さないための少しでもヒントになれば嬉しいです。
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